おじいちゃんとおばあちゃんに囲まれて観た映画
近所に月数回無料で映画が観られる場所がある。
入口に看板が出ていて、直近の上映日から向こう何回分かのラインナップが手書きされている。
古い映画ばかりやっているのかな?と思っていたけれど、通るたびにチェックするラインナップは新旧問わず多彩で、ちょこちょこ気になる作品がある。上映日に都合が合わずなかなか観に行くことが出来なかったのだけど、今回ようやく興味のある作品の上映日と予定のない日が重なったので行ってみた。
当日、上映予定の時間に会場付近に行ってみると、外には誰もいない。
路上から見える場所に看板はあるものの、「会場はこちら」みたいな案内はない。周囲に人っこ一人いないので、およよとうろたえる。キョロキョロしてる間に上映時刻になってしまい、仕方ない帰るか…と思っていると、看板が立っている敷地内の一番奥の扉が開いておじいちゃんがひょっこり出てきた。
ぱちっと目が合ったおじいちゃんは「映画観に来たの?」と訊いてくれて、そうですと答えると会場まで案内してくれた。
おじいちゃんが出てきた扉の向こうが上映会場で、入った瞬間ポカン。
30人分くらいは用意された椅子は8割埋まっていて、パッと見た感じ観客はほとんど年配の方だった。50代の人もいたのかもしれないけれど、その位の年の人は服装や顔つきで60代にも70代にも見える。
明らかに自分が1番若輩であることに緊張しながら、案内してくれたおじいちゃんの隣の席に座った。ちなみに逆隣りはおばあちゃん。最前の席だった。
観た映画は「切腹」。
仲代達也と丹波哲郎の決闘場面で使われたのが真剣である、という知識だけ持っていた未見の作品でした。
詳しくは↓
観終わって、司会らしいおじさんが観客に感想を聞いたところ、1番に出てきた言葉が「切ない」だった。
ありきたりだなと思ったけれど、確かに咄嗟に何と言葉にすればいいか迷う。
仲代達也演じる津雲半四郎の行動は、その場にいた井伊家の者たちに多少なりとも悔恨の念を感じさせたかもしれない。でも結局表面上は何事もなかったかのように井伊家の体面は守られる。
なんだかなーーーー!!!その死に意味はあったのか!!!
などと短絡的に思ってしまうのでした。
まぁ守られたのは表面だけで、時代の移り変わりを誰もが感じており、武士道というものは既に張りぼてなってしまっていて、薄々感じていたことを津雲半四郎の行動によって目の当たりに見せられたということは無意味でなかったんでしょうけど…。
やっぱりひと言にしたら「切ない」なのかなぁ。ありきたりだけど。
ストーリー以外で印象に残ったところ。
・仲代さんの両腕を交差させる構えがかっこよかった。ヒーロー感。
・孫のおもちゃがサイコロと般若?の面なところ。和む。
・千々岩求女役、岩濱さんが美男子すぎる。
・武士が髷を切られるのは死に等しい、というのは知識としてあったので「おおっ」となれたけど、そういう共通認識がないと逐一解説なしでは意味がわからなくなるよね。
この映画、数年前に津雲半四郎役を海老蔵でリメイクされているそうな。
こちら↓
機会があれば観てみたい。
2時間ちょっとの作品。観終わったらお尻が痛い。
予定ではこの後もうひと作品上映されるらしい。隣のおじいちゃんに聞いたところ、観たい作品だけ観て帰っても構わないとのこと。
お尻も痛いし集中して一作観たら疲れたので帰ることにした。
ありがとうございましたと席を立つと、なんだか周囲の方々からの生暖かい視線を感じた。お邪魔しました。ちょうど私の後ろの席に座っていたおばあちゃんからはアメちゃんを頂いた。
ちょっと作品の話をしたら、もうすぐに次の上映が始まるらしい。
ここまで2時間経っているのにお手洗いに立つ人も体を動かす人も少ない。そのままこの後また2時間弱の作品を観るのか!すごいよ!体力的にも精神的にも!
無料の上映会。
それは公民館みたいな場所でプロジェクターを利用した上映会。
鑑賞しながら「あれだ、「ショーションクの空に」で出てきた鑑賞会みたいな感じだ」と思ったのでした。
自由参加のお楽しみ会な感じ。
また行きたいなー。